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静かな一瞬が流れる。
小さく聞こえるうめき声が、電車の通過する音で数秒かき消される。
かすれかすれの助けてという声が聞こえた。
獣が6人。
1人か2人はもう死んでいるようだ。
志奈をレイプしたのはお前らか?
獣は小さく首を縦に振る。
‥‥‥助‥け‥‥‥て。
あぁ、助けてやるよ。世界からな…。
帰ろうと振り返ると、太いチェーンと錠、そして見覚えのある携帯を見付けた。
携帯の機能から持ち主のプロフィールを見るとやはり妹の携帯だった。
扉を締め、チェーンをし、鍵を締める。
あと三日もすれば全員息を引き取るだろう。
だが3日後に通報してやるほど出来た人間じゃない。
勿論、今通報して助けてやるなんて考えも及ばない。
志奈の助けてという言葉はきっと、あの獣共のことだろう。
そうすれば閉じ込めたのは志奈ということになる。
…不可能では無い。
志奈は不眠症で医者から睡眠薬を処方されている。
それを使えば、志奈の頭なら充分に可能だ。
俺は忘れる。
獣共は死に絶え、志奈はみんなの記憶の中で可愛く綺麗なままで残る…。
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