序章

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『おのれおのれぇ!このまま送り返されてなるものかあ!』 アヤカシは怒りに燃えた目で三人を睨み付け、があっと牙を剥き出す。 「昴」 香椎が昴の名を静かに呼ぶ。 その声に反応するかの様に、昴がすばやく動いた。 ふっとアヤカシの後ろに飛び、その首筋に踵を叩き込む。 ぐらりとゆれたアヤカシの肩に足をかけ、トンっと軽く蹴り上がると、昴はそのままくるりと回転して着地した。 続けざまに朔が札を取り出し、真言を唱える。 札は大きな白犬の形を取り、吠えながら走ると、勢いよくアヤカシの腕に噛みついた。 「しいちゃん!」 「香椎!」 二人がそれぞれ名を呼ぶ。 それを合図に、香椎が素早くアヤカシの前に走りより、その刀で横一線にその身体を斬り裂いた。 アヤカシは声にならない叫びをあげる。 そしてその姿はゆっくりと闇にかき消えた。
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