序章

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「お疲れ様ー、しいちゃん」 朔がポンッと香椎の肩を軽く叩く。 香椎は一呼吸置くと刀の血を払い、鞘に納めた。 「朔達もよくやったな」 「そりゃ愛しいしいちゃんの為ならたとえ火の中水の中」 「愛しいは余計だ」 憮然とする香椎を尻目に、朔は全く気にせず香椎の肩に腕を回す。 「よしっ!それじゃ今夜は飲もうか。しいちゃんの活躍と、昴の足手まといに乾杯して」 「だから足手まといは朔の方ですっ!」 昴はムッとして自分の腰に手を当てながら朔を睨み付ける。 「…まあ、飲むなら【月~ユエ~】で飲めるだろ。報告が必要だし」 二人の喧騒に、ため息をつきながら香椎は呟く。 「えーっ!たまには綺麗なお姉さんと飲みたいのにー」 「それ、凛にいってやろ」 「わ、それだけはやめてよ。こうちゃん」 歩き出す二人の後をついて歩きながら、香椎はふと視線を真上の桜に向ける。 花びらは先ほど自分が切ったアヤカシの血の色で、赤く染まっていた。
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