序章

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王都の街外れ。 他の建物から離れるようにたつ一軒の店。 店の名前を示す銀のプレートには【月】としか書かれてない。 香椎はその建物の扉を引き開けた。 扉についていたベルチャイムが、軽やかな音を立てる。 中にはアンティークの品々が、きちんと並べられている。 「りんちゃん、いないのぉ?」 店に入った朔は、キョロキョロと辺りを見回した。 「居ないみたいだね」 昴がアンティークドールを両手で抱えながら呟いた。 「うわ~、ラッキー♪いまのうちに秘蔵の酒空けちゃお」 朔はそう言うと店の奥にある小棚を引き開け、一升瓶を取り出した。 「やめとけ、朔」 「ええ?だってしいちゃんも飲みたくない?」 香椎は朔の後ろを見ている。 「まずは持ち主に断りを入れるのが筋だろ?」 「え?持ち主?」 朔は一升瓶を抱えながら恐る恐る後ろを振り向く。 そこには、ハリセンを持った黒髪の少女が、にこにことこちらを見ていた。
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