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ひらひらと桜が舞い散る白壁に囲まれた石畳の道。
月の光に桜の花の臼桃が暗闇にぼんやりと浮かび上がっている。
その木の下。一人の男が壁にすがるように立っていた。
黒曜石の様な髪に、青色の瞳。
背の高い彼の腰には、シンプルな日本刀がぶら下がっている。
その男は両腕を組み、道の向こうをじっと睨むように眺めていた。
「しいちゃん」
早足で駆け寄ってきた一人の男が、その男に声をかける。
黒髪の男はその声の方をちらりと横目で見た。
「朔(さく)。
いい加減しいちゃんと呼ぶのはよせ。
俺は香椎(かしい)だ。」
香椎は無表情のまま朔と呼んだ男に答えた。
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