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「ええ~?だってしいちゃんはしいちゃんだし」
長い金の髪の優男がその栗色の目を細めて小さく笑う。
「で、首尾はどうなのさ」
その金髪を口にくわえた長い紐で結わえ直しながら、朔は香椎に問いかけた。
「今、昴(こう)が追跡している」
「えー。こうちゃんに任せてんの?なんか不安だなあ」
「お前よりは役にたつさ」
薄く笑みを浮かべる香椎に、朔はがっくりと肩を落として、じとりとした目を香椎に向ける。
「しいちゃんたら、冷たーい。俺だってさあ、俺だってさあ~。頑張って罠を仕込んで来たのに、しくしく」
「…ついでに、ナンパだろ?ここに紅がついてるぞ」
香椎は、渋い顔をしながら自分の右頬をかわりに指差した。
その指摘に朔は慌ててごしごしと頬を擦る。
「だってさあだってさあ、とても可愛い女の子がいたんだよ~。危ないから避難させなきゃでしょ?」
「…それよりお前に避難させなきゃな」
香椎はそう言いながら、ふっと表情を固くすると、カチャリと刀に手を触れる。
「さて、来るぞ」
香椎の声と共に、二人は道の向こうを共に見た。
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