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白壁の瓦がガチャガチャと激しく音を立て、黒い影が飛ぶようにその上を走っていく。
それを追う様に走る小さな体の少年。
短めの青い髪を風に揺らし、その大きな瞳は月の光に照らされてきらきらと輝きを見せる。
チャキ。
少年は走りながら自分の懐に手を突っ込むと細いくないを取り出し、飛ぶようにその影に投げつけた。
黒い影がそれに反応するかのように、ばっとその場からとびずさり、くないは瓦に次々に突き刺さる。
影は壁の上に立ち止まり、ゆっくりと少年を見据えた。
『アヤカシオクリか』
「そうだよ、アヤカシさん」
少年は瓦の上に立ち止まると、ふふ、と無邪気な笑顔を向ける。
「僕は妖送り【アヤカシオクリ】の昴(こう)。
お前達迷い出てきたアヤカシを送り返すのが、僕らの仕事だ」
少年はその足に履いたスニーカーで、どんと瓦を踏み鳴らした。
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