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月明かりに照らされて、黒い影はその姿をゆっくりと表す。
異形の姿。
大きな牙を剥き出し、鋭い爪をこちらに向ける、猿の様なアヤカシは、威嚇するように昴に唸り声をあげる。
『小さい餓鬼が、生意気な』
「…はい?ガキ?」
ぴくりと昴の眉がひきつる。
「僕はですね、身長の事とガキ扱いされんのが、一番腹立つんだよっ!」
大きく叫びながら昴が素早く壁の上を走り、アヤカシの懐にまっすぐ飛び込む。
そして細い足をぐるっと回すと、その首に強烈な一撃を叩き込んだ。
『ぐわっ!』
アヤカシはその攻撃に耐えきれず足をぐらりとふらつかせる。
間髪入れずに、昴は数発拳をアヤカシの腹部に叩き込んだ。
アヤカシはその反動で壁からどさりと石畳の上に落ちる。
「油断するからです」
構えを解いた昴が白壁の上にたって、倒れるアヤカシを見下ろしながらにこりと微笑んだ。
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