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一呼吸おいて、再び智久君は口を開く。
「親父は、厳格の象徴みたいな人だったからさ、俺の傷見たって志望校変える事を許してくれなかったんだ。周りの男子校はレベル低かったし、レベル落とす為の言い訳とかでまったく相手にされなかった」
……そんな……
傷付いてる息子に、どうしてそんな態度を取れるの?
じゃあ……男であるお父さんにもあしらわれて、智久君一人だったんじゃ……?
「あの時は母さんにも妹にも頼る気はなかったから、正直孤独だった。一日中部屋に出ない事もあったし、いっその事家出してやろうとも思った。それほどまでに居心地が悪くて、俺も母さん達に迷惑かけてるって分かってたから、最悪いなくなれば迷惑かけないで済むなって、自殺も考えてた。とことん追い込まれて、自分の人生呪うしかないんだなって。
でも、希望はまだあったんだよ」
智久君の口調が、最後の部分で柔らかくなるのを感じた。
きっとそれは、私以上に智久君を救ってくれた存在だからだろう。
私はそのまま、視線を落とさずに耳を澄ませた。
「……巧がいたんだ」
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