始まりの冬

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「知らねえよ、じゃあな」 俺は、そいつを適当にあしらって再び廊下を進もうとした。 だが、 「ちょっと待って!少し話がしたいの!」 そいつは俺の腕を掴んできた。 ……このアマ……! 「気安く触れんじゃねえ!」 俺は強くそいつの手を振り払った。 「ゴメンなさい、少し話がしたくて……」 「俺はねえよ!どっか行け!」 まったくなんなんだこの女…… 俺が女子と話したがらない事くらい知ってるだろうが…… 「智久落ち着いて、皆こっち見てるよ!」 今まで隣にいたが、妙に影が薄かった巧が俺にそう言ってきた。 俺が叫んだせいか、周りの目が俺達の方を向いている…… 気のせいか、男子の視線が厳しい気がする…… くそ、マジで面倒だな…… 「それで岸本さんは智久に何の用なの?」 巧が俺らの間に入ってその女子に問いただす。 ……待てよ…… 「巧、そいつ誰か知ってんのか?」 俺は巧がそいつの名前を知っていた事を不思議に思った。 「智久……ホントに誰か知らないの…?」 巧は呆れた表情で俺を見てきた。
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