プロローグ:愛の迷宮、その入り口

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「ホントにな、心配したんだぞ。お前が救急車に運ばれたと聞いたときは、血の気が引いた」 ジッと、真剣な眼差しを俺に向ける姉さん。 黒く透き通った瞳が、俺の心に突き刺さる。 わかってるよ。心配かけただろうなってことくらい。 「お前にもしものことがあったら、私も死ぬからな」 「冗談にもならないこと言うな」 「私は本気だ」 それもわかってる。 だからこそ、たちが悪い。 「それが嫌なら、自分の身は大事にするんだな」 「はいはい」 こっちとしては、そちらにこそ自分の身を大事にしてもらいたいものだが。 そんなこと姉さんに言っても、彼女はキョトンと首を傾けるだけだろう。 「まあ、お前は私から見ればまだまだ幼い、可愛い弟だ。何かあっても私が守ってやるし、助けてやるんだから、存分に頼り、甘えるといい」 「子供扱いするんじゃないやい」 「子供じゃないか。ほら、現に今、私にこうして世話されているだろう。何、遠慮するな。さきも言った通り、全然甘えてくれていいんだからな」 ニヤニヤしながらそんなことを言いやがる。 更には二つ目の梨をフォークに突き刺し、『はい、あーん』攻撃だ。 「ほら、早く口を開けろ。何を不貞腐れている、可愛い奴だな」 「骨折箇所が両腕でさえなけりゃ……、姉さんの出る幕なんかないやい」 「安心しろ。両腕が健在だろうと、別に何一つ怪我がなかろうと、梨くらい私が食べさせてやる」 「…………自分で食う。フォークを下げろい」 「ほう、どうやってだ?そんな両腕で」 「俺たちの足は何の為についている?前に進む為?違うね。梨を食うためだよ!!」 「いや、それは確実に有り得ないと思うが……」 こうなりゃこっちも意地だ。 何としても姉さんの世話にならずして、入院生活を終えてやる。 こんだけガキ扱いされて、黙ってられるか。

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