あなたへ贈りたい

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    死んでしまった あの人は 優しく生きた人でした…。 淡いピンク色の花束の前で、私は手をあわせました。 この間、切り揃えたばかりの前髪が、風に揺れます。 8年ぶりに訪れたそこは、何一つ変わっていませんでした。 時間が止まったように、静かな場所。 見下ろせば、そこには緑の山と青い海。 あの人の生まれ育った故郷。 刻まれたあなたの名前。 膝を着くと、緑色の草がくすぐったいです。 7月の今、私の前髪の下に汗がにじみます。 ふと、気づくと私の携帯が小さく震えていました。 「もしもし」 「あっ、俺だけど」 彼からの電話でした。 「大丈夫?」 「大丈夫だよ。終わったら電話するから」 「ゆっくりでいいよ。何時でもいいから。電話してね」 彼の優しい言葉に、思わず頬がゆるみました。 ありがとうと告げ、電話をきりました。      
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