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「アンド……ロイド?」
『うん、アンドロイドだよ』
長い沈黙が続く。
そして、啓がゆっくり口を開いた。
「お前とうとう欲求不満で幼女アンドロイドを『ちっがぁぁぁぁぁう!!』
「……三割冗談だ。んでなんでまたアンドロイドを……」
『ほとんど本気じゃん……えーと、俺がアンドロイド関連の会社で働いてるのは知ってるよね』
ああ、と、啓はうなづきながら言った。
―――何でも、凉也はその筋では有名らしく、働いている会社も一流なのだと、本人から名刺混みで語られたことがある。
『うんうん、あれだけ語ったから覚えててくれるよねぇ。
……それでさ、会社のプロジェクトで作ったんだよ、女の子のアンドロイド』
「ん、で?」
『事情があって……俺が預かることになっちゃって……でも俺忙しいし。色々』
「……で、俺に頼みに電話、と」
『そうそう!話が分かるねぇ』
「別のヤツに頼め」
バッサリずっぱり、見事なまでの拒絶。
啓の抑揚のない喋りと相まったそれは、非常に冷たく響いた。
『…………』
「…………」
『……あのね、啓』
「何だ」
『俺だってこんな断られ方されたくらいなら別のヤツに頼みたい』
「そうしろ」
『でも俺……啓以外に友達いない……』
「え」
思わず啓は固まった。
段々と凉也の声が涙声になって行く。
『何か知らないけどみんな二次元について熱く語ったら逃げるし……じゃあアンドロイドのことでもって思ったらまた逃げるし……だから俺……俺……』
「わわわ分かったから!!
分かったから落ち着け!!」
『ホント!?』
輝かんばかりの笑顔を湛えて―――電話越しなので想像に過ぎないが―――、可哀想な友人は言った。
俺ってバカ、そう思いながら啓は「ああ」とだけ返した。
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