解逅

2/6
前へ
/9ページ
次へ
それから数日後、凉也はやってきた。 「いやー、さすが今売れっ子の作曲家さま、やっぱなんか……お家もナウいねぇ」 「古いぞ、化石並みに古いぞお前」 そう?と、何とも気の抜ける声で言いながらへらへらと笑う凉也を見て、啓は大きなため息を吐いた。 「ねぇ、お茶はー?」 「お前に飲ませる茶はない。とっととアンドロイド置いて帰れ」 「えー、やだ、お茶!!」 「……だからお前は友達が少ないんだよ」 「うわここで持ち出さないでよ」 「だったら俺以外の友達作って持ってこい」 ……と、口ではキツいことを言っていた啓だが、いつの間にかちゃんと紅茶を凉也の前に置いてやっていた。 何だかんだで、啓は世話焼きというか、微妙にお人好しなところがあった。 「わーい、ありがとうー」 「今回はたまたまだからな」 「えー」 「そうかそうか、凉也はそんなに俺の締め技を食らいた「ゴメンなさい調子にのりました!!」 凉也の全力の謝罪(土下座つき)を見た啓は、満足げにうなづきながら自分の分の紅茶を一口啜った。 「……んで、本題だ。  そのアンドロイドはどこだ?」 「ふえ?なんらふぃっふぁ?」 お茶請けのクッキーを口いっぱいに頬張りながら凉也は応えた。 何でこいつと友達やってるんだろう、と、啓はあらためて思った。 「うそウソじょーだん。  《あの子》ならここの玄関に待機させてるよ。  ……もう呼んでくる?」 「あぁ」 「……もう?」 「何で焦らす」 「……あー、何でもないよ、うん……呼んでくる」 凉也は茶色い癖っ毛の頭を掻きながら、何かぶつぶつ言いつつ部屋から出ていった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加