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マルセイユは、優しく頭を撫でられた気がして、目を開けた。
板張りの、雨漏りでもしそうな古めの天井が目に入ってくる。
「ふぇ?」
あたしは一体なぜこんなとこに?
少しずつ視線を横にずらすと、黒髪の少年が一人。
ベッドの傍らにある椅子に座りぼぅっと板張りの壁を眺めていた。
マルセイユの視線に気付いたのか、紅い瞳をこちらに向ける。
「あぁ、気付いたのか。良かったな。」
「・・・なんで」
「え?」
「シャラ・ヌ・クーラ!なんであなたがここにいるの?」
マルセイユはゆっくり半身を起こした。後頭部が少し痛む。
「痛たた・・」
「まだ寝てていいよ。この宿明日までとってあるから」
「はっ!試合は?賞金は?どうなったの」
「試合?・・・あぁ、もちろん僕が勝ったよ」
シャラヌが賞金の入った小さな袋をマルセイユの目の前で揺らしてみせた。
「うそ!?あなたが優勝?」
マルセイユは驚いたように、もう一度シャラヌの足の先から頭のさきまで見た。
確かに、あたしを倒したとき凄くスピードがあったみたいだけど・・
あの道場のイベントにはかなりの強者が揃っていたはず・・
それを、この華奢な男が??
「・・・あたしの荷物は」
釈然としなかったが、賞金を見せ付けられたからには信じるしかない。
マルセイユは頭を切り替え、あたりを見回した。
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