海の風

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マルセイユは驚いた様にシャラヌを見た。 「・・え?」 「だから、何て呼んだらいい?僕はシャラヌでいいよ」 シャラヌが言った。 その顔には先ほどとはうって変わり、あどけない少年の面影が残った、屈託のない微笑みが浮かんでいる。 「・・・マールがいい・・」 「マール??」 「うん。マールって呼んでもらうのが好きなの」  「そっか」 シャラヌがうなずいた。 そして、荷物から何か取り出し、マルセイユに差し出す。 それは荘厳な金の装飾の施された短剣だった。 マルセイユは、意味が分からず、シャラヌと短剣を交互に見つめた。 「約束してくれる?」 シャラヌが、優しくマルセイユの手をとり、短剣を持たせた。 「・・?」 「僕が・・・もし、僕じゃなくなったら、これで・・・止めてほしいんだ」 短剣はどっしりと、重かった。 「・・・とめるって?ぼくじゃなくなったらって?」 「僕と一緒に来るのなら、それが条件だ。守れるかい?」 「・・・・」 マルセイユにはその意味がわからないでいた。 わからない約束を承諾する訳にいかない。 マルセイユが考えあぐねていると、シャラヌが言った。 「ごめん。困るよな、今の言い方。でもこれだけは守ってもらわなきゃ、いっしょに居られないんだ」 「・・・」 「傷つけるわけにはいかないから」
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