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兄貴が家を出て行って、我が家は急に淋しい空気に包まれた。弟も兄貴が大好きだったから、明らかにいつもより元気がない。
食卓にはいつも兄貴が座っていた席がポッカリと空き、そこには弟が座ることになった。
いつも弟が邪魔な位置に座っていたから、テレビを見ていても「どけろよー」なんて言っていたのに、今は視界が良好すぎてその言葉を言うことも無くなった。
おかずもいつもより少ない。
いや、お腹はいっぱいになる。…そうか、兄貴がいないからだ…。
やがて家族の前で話すことも減り、部屋に籠もってギターを弾く毎日を過ごした。
育ち盛りの中学生には珍しく、体重が少し落ちた。
弟と二人部屋だったから、親とケンカすることを避けるように弟と過ごすことが多かった気がする。その方が気楽で、兄弟喧嘩も少なくて済んだ。
なのに母親は「部屋から出てきなさい!」と声を高らかに上げて怒鳴る。
関わりたくないということがわからないのだろうか。
そっとしておいて欲しい
と言うと、K少年の身長より低い位置から頭を叩かれた。
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