206人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
高校3年。
ここは、とある県の田舎町。
季節は七夕前のころ。
そこは星のきれいな町だった。
思えば、俺となつみの出会いはこの木の下だった。
一人でそっとギターを弾こうと、小高い丘、大きな木が一本あるここに来た。
俺のお気に入りの場所。
今日は、先客がいた。
一人の綺麗な女性。
とても上品そうで、そう、この俺、加瀬純也が一目惚れした初恋の人、三原なつみだった。
彼女は俺に気付くと、にこやかに微笑んで、
「こんばんわ」
そう言ってくれた。
沈みかけた夕焼けで朱に染まるなつみは、色っぽかった。
その美しさに見とれ、返事が遅れてしまった。
「あっ。こんばんわ」
彼女は、指を丸めた手を口に当てて笑った。
「あなたは高校生?」
「は、はい」
受験に受かってるし、ほとんど高校生みたいなものだった。
「先輩ですね。あっ…、そろそろ時間。私は先に失礼させてもらいます」
「はい」
「またどこかで会いましょう」
彼女は、腕時計をもう一度確認して、手を振って去った。
とっても短い時間が長く感じた。
その後すぐに、純也はウキウキしながら、彼の親友である本田剛にメールを送った。
最初のコメントを投稿しよう!