野次馬

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「…せんせい。」 思わず出た声に 先生は反応したようで いつもの優しい笑顔で挨拶をした。 「よっ。」 右手を軽くあげてニコとする。 同じ挨拶の仕方だ…、きっと癖だ。 真琴は距離を置くための 笑顔で返した。 「誰もいないですね。」 これは私のいつもの癖だ。 下手に媚びを売る女と思われないように まずは男と距離をおく… その為に身につけた癖。 先生は 呆れたように頬杖しながら笑う私を なんとも言えない表現で見ていた。 ほんの一瞬だが 初めてみた顔だった。 優しい中の切ないような …可哀想な眼差し… 「せっかく八木来てるのに行かないのか?」 いつもの顔で微笑む先生。 真琴は先生から目を反らすように あっけらかんとした風に言った。 「興味ないですから。」 少々まずったかな、と言ってから後悔した。 なんだこいつ…とか引かれる… ははははっ!! 「なんだよ興味って。面白いな」 しかし、彼はあどけない笑いで私の不安を打ち消したのだった。 先生は楽しそうに私を見た。 私に向けられた こういう笑顔は初めてで 不覚にもドキ…とした。 、
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