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―因果応報?
ああ、ほら、いじめてたから、いじめられるようになったってことさ。
―それって……。
自己満足だろ?
分かってるよ。
僕だってずっとそう思ってた。
でもさ、中学時代は美少女に囲まれて、友達もかなり居たんだぜ。
結局、僕は変われなかったんだよな。
彼女が居たから、彼女との思い出が心にあったから、多分今の僕ならビビってやめてただろう幾つかのことが出来たんだと思う。
修学旅行が近づいて来るにつれて、班別行動のコースを決める為に渡辺さんと一緒にいることが多くなった。
それまでは何となく遠かったんだけど、その頃になると僕にとって渡辺さんは一番近い距離にいる異性になった。
渡辺さんはおとなしかったからあんまり異性とは話さないから、僕が彼女にかなり近い距離にいる異性だったのは多分思い込みじゃない。
そういうわけで、渡辺さんはどさくさに紛れて僕を名字だけで『田原』と呼ぶようになったし、僕は渡辺さんをさりげなくからかうようになった。
机の距離もちょっとずつ近づいて行って、たまに隣の席で渡辺さんが寝ると寝息が聞こえるようになった。
話してて気持ち悪くなるんだけど、とにかく彼女は今までにはタイプの人で、しかも自分を見直すきっかけをくれた人だから、何か打ち込めるものがなかった高2の冬迄は彼女は特別だった。
特別過ぎて、他の誰も気にならなかった。
―芸能人とかも?
芸能人も全く。
たまに渡辺さんに似た人がいるとちょっと気になるくらい。
―大変だね。
まあ初めて人を好きになったのは幼稚園だから、初恋って訳じゃないんだけど、実質的な初恋は渡辺さんだからね。
―幼稚園で初恋?
記憶は無いけどキスも経験済みだぜ。
―唇?
さあ、ほっぺたかもしれないけど、なかなかその機会もないだろ?
―まあね。ずいぶんマセてたんだね。
大人の先生にかわいがられてたし、小さい頃は入院ばかりしてたし近所は大人ばっかりだったから自然と大人っぽくなってたのかもね。
今は暗い性格になったけどな。
―またそういう事を。
知り合いの先生に話された時とか、渡辺さんと2人で居るといつも彼女はこっちを見た。
頼られてるってのはなんだかんだで悪いもんじゃないぜ。
たしか、その頃光の話をしたんだと思う。
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