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僕たちの距離は近づいたり、離れたりを繰り返していた。
ふと距離が近づくと休みになる。
まともな会話が成り立ったと思ったら、恥ずかしくて名前が呼べないとか、そういう何でもない事でちょっと気まずくなってしまう。
全体的に見れば変わらない距離なのに、僕はいつも距離が遠くなるのかと不安だった。
修学旅行は2泊3日で、1日目は奈良を、2日目は京都での班別行動で、3日目はクラス別に行動し、お土産を買う予定だった。
同じ鹿に鹿せんべいをあげ続けたら、その鹿になつかれたり、小鹿を見つめる渡辺さんをかわいいと思ったり、その時鹿せんべいを残しておかなかった事に後悔したり……。
夕方頃に奈良を出て、京都市内のホテルに泊まった。
女子とは別の棟だったから、渡辺さんとは会わなかったけど、水野さんが同じ部屋だけど違う班の人と次の日の班別行動の打ち合わせに来て、何人かを連れて行った。
「俺たちは大丈夫なのか?」
と同じ班の人が聞いてきた。
「さあ」
と答えてはみたものの、やっぱり少し不安だった。
班別行動についても心配だったけど、それ異常に相談に渡辺さんが相談に来てくれないということが心配だった。
水野さんは相変わらず僕をからかっていったけれど、渡辺さんのことは何も言わなかった。
あれだけ計画を練ったんだから大丈夫と考えていたのかもしれないし、僕を信頼してくれていたからかはわからない。
信頼していてくれたら良いと思う。
でも、もしかしたらそうじゃないかもしれない。
とにかく、その晩は消灯時間を少し過ぎたくらいに部屋の電気を切った。
その後ももちろん起きてたんだけど。
暗くした部屋で、ホラーが苦手な友達を全員で驚かしてたりしたら、遅い時間になってきたから、寝ることにした。
次の日のことを考えると緊張して寝つけなかった。
髪の毛に寝癖がつかないように枕に頭をのせる位置に気を使いながらその日の夜は寝た。
―修学旅行じゃシャワー浴びてたよね。
中学じゃそこまで自由じゃなかったからね。
高校に入ると同じ公立でもこんなに違うんだな、と思ったりしなかった?
―中学と高校じゃ違うでしょ。
そうだけどさ。
―で、話の続きは?
つまらなくない?
―つまらないけど、ここまで聞いたから最後まで付き合うよ。
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