夏至りしひと時

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日に日に日差しが強くなり、気温も高くなる。このうだるような暑さの中で喜ぶのは、草や花それから虫くらいだろう。外から聞こえてくる蝉の声を聞きながら夏の到来を感じた。 夏という季節は、意味も無くただ暑いわけではない。夏は秋という実りの時期、言いかえれば、今、外で栄えている植物や虫の死の時期の前兆なのである。 この先に待っている定められた終わりを知る生命は、この時期にその命を昇華させ次の世代に繋げていくのだ。そして、その時にあふれ出した生命の力の余波が暑さの原因だ。 「――この暑さではやはり誰も来ないか……」 この暑いなか外に出るのは得策とは言えないだろう。僕の開いている店「香霖堂」にも最近はめっきり客足が途絶えている。今日もこの天気では誰も来ないだろう。そう思い、読みかけの本に手を伸ばした。
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