蛍と神風

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「あなた達は、この鹿児島の土地が太平洋戦争の最中、陸軍の基地だった事を知っているかな?」 「ええ、聞いた事はあります、君は?」 僕は素直にそう答え、妻の意見を求めた。 「私も聞いた事はあるけど、あまり詳しくは知らないわ」 「そうですか・・・」 「すみません、勉強不足で・・、でも、それがどうかしましたか?」 「いや、これも何かの縁だ。よかったらわたしに話をさせてくれないかな」 「鹿児島の話をですか?」 「ええ、そうです」 僕と妻は顔を見合わせた。 「私は聞きたいわ、これからお世話になる土地だし、知っておいても損はないもの」 妻は珍しく興味津々に話に加わっている。 「そうか、君が問題ないなら・・」 僕等は話をまとめると初老のマスターに相槌を打った。 「ありがとう、少し長くなるけど我慢して聞いてくださいね」 初老のマスターは妻の目を見てそう言った。 どうやら妻の扱い方が解ったようだ・・・ 初老のマスターはブランデーを少し口に含むと、飲み干し、 「じゃあ」 そう言って話を始めた。
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