蛍と神風

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「どうですか、所々知っている話もあったでしょう」 初老のマスターは話を終え、煙草に火をつけた。 「・・はい、富屋食堂の話はいつだったか聞いた覚えがあります。確か蛍の・・」 僕はうろ覚えの話を思い出そうとしていた。 「ああ、宮川隊員の話だね」 「宮川隊員?」 「そう、あなたが言う蛍の話の主人公だね」 「・・・そうでしたっけ・・すみません、あまりよく憶えていないようで・・」 僕は今まで何度謝っただろうか・・・ 「いやいや、知らない人もいるくらいですから」 初老のマスターは煙草をふかしながら笑顔で応えた。 「そういえば私達、ここに来る前に近くの川で蛍を見ました」 妻は思い出したかのように川辺の遊歩道での出来事を話し始めた。
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