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「本当かい?」
初老のマスターは驚いた様子で妻に聞き返した。
「ええ、一匹だけ、すぐに見失いましたけど・・」
「それは珍しいね、昔はこの辺でも見る事が出来たんだけどね、都市開発が進んでからは全くと言っていいほど見なくなりましたから」
「ああ、やっぱり・・・でも、私達九州を一通り回ってきて、今日初めて見る事が出来たんです」
「そうですか・・・また・・誰か帰ってきたのかもしれないな・・」
初老のマスターはグラスを片手に物思いに耽っている様子でそう呟いた。
「帰ってきた?」
妻は腑に落ちない様子で首を傾げ、初老のマスターに問いかけた。
「ああ、すまない、宮川隊員の話なんだよ」
「富屋食堂の話ですね」
「ええ」
「そのお話、聞かせてください」
妻は身を乗り出してマスターに頼んでいる・・
素晴らしい・・妻が酒と僕の稼ぎ以外に興味を持つなんて・・・
「僕も詳しく知りたいですね」
僕は妻に便乗して調子を合わせた。
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