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トメは食堂の隅でこの様子をじっと眺めているだけでした。
明日、命を捨てに出て行く若人に私が出来ることは何なのか、いつも考えながらも、どうする事も出来ませんでした。
別れの時間が迫り、静かにトメのところにやって来た宮川隊員は
「母さん大変お世話になりました。お国の為、見事に散ってまいります。 そして、私は蛍となって、母さんのもとに帰ってまいります。 蛍を見たら私だと思って、追い払わずに迎えてやってください」
と落ち着いた口調で申したのです。
一瞬、食堂内は静まり返りましたが、トメだけは宮川隊員の真剣な眼差しに只ならぬものを感じていました。
そして翌朝、宮川隊員は茜色に染まった南の空に向かって、片道の燃料を積んだ25機の戦闘機と共に飛び立っていきました。
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