冬日の魔女と、ある孤児の話

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右手の温もりに気づいて、孤児は目を開けた。 目に入ったのは、隙間から空が覗く粗末な作りの天井だった。 体を起こし、ぼんやりと霞がかかった頭を振って体を見下ろす。横たわっているのは、小さな部屋のすみにある質素な寝台の上だ。被せられたあるかなしかの厚みの掛布からはみ出した右手を、女の人が握りしめている。長い髪、整った顔、質素な服、全てが白い。突っ伏したまま眠っているのか、小さな吐息が聞こえる。 彼女の胸元には、先ほど助けた小鳥が寄り添うように蹲っていた。汚れてボロボロだった羽には布が巻かれ、こちらもすやすやと眠っている。 冬日の魔女だ。そう気づいてからも、孤児は動けなかった。漠然と思い浮かべていた老獪で邪悪な魔女の姿と目の前の女性は、あまりに違っていたのである。 顔つきは二十歳になろうかという頃だろうか。銀の光沢を放つ白髪のせいで、それよりずっと大人びているようにも見える。いつの間にか夜になっていたのか、天井の隙間から差し込んだ月明かりに照らされて、肌は淡く発光しているかのようだ。 なによりも握られた手の温かさが孤児の心を惑わせた。育ててくれた父と共に長い長い旅をしてきたが、父の他にこうして手をとってくれる人はいなかった。ひどく懐かしく感じられる人肌は、父のごつごつとした大きな手の感触を嫌でも孤児に思い出させるのであった。
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