冬日の魔女と、ある孤児の話

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「右手を握って」 言われるままに冷たい手を取る。そっと包まれた指の中には、あの小鳥が眠っていた。 「春になったら、目覚めるように、魔法をかけたわ」 「はい」 「この力も、貴方になら、託せます。きっとうまく、使えるから」 「はい」 「ありがとう。貴方はいつか、誰よりも優しい人に、きっと……」 嗚呼、今、魔女の最後の力が消える。 霜が二人の周りにわずかに残った緑を覆うと同時に、冬日の魔女は目を閉じて、そしてそれきり動かなかった。 月の光に照らされながら雪が舞い落ちる。魔女の手を握ってそれを見上げる孤児の髪や肌や、片方だけになった角は、いつの間にか白く染まっていた。 「お休みなさい、冬日の魔女」 悲しくはなかった。孤児は立ち上がると、眠り続ける小鳥を抱いて、森の中へと消えていった。 残された足跡の上には静かに雪が降り積もって、やがてそれすら見えなくなった。
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