喫茶レストランテ

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「楓さん。お仕事ですよ」 「……」  楓さんは仏頂面でカウンターに肘をついていました。 窓際には先生がいつものように座っていました。 「はい。コーヒー」 「……」  楓さんはコーヒーをトレイに載せると諦めたように先生の所へ向かいました。 「はい。コーヒーです。先生」  コーヒーをテーブルの上に置くと先生は顔をあげました。 「ありがとうございます。…はっくしょん」 「風邪ですか先生?」 「ええ。昨日ちょっと寒かったもので」 「雨の中、傘もささずに歩くからですよ」 「え?」 「なんでもありません。ちゃんとご飯食べてるんですか?」 「いや、最近はちょっと、研究が忙しくて」 「駄目ですよ! 先生の家はどこですか!」 「え? いえ、そこの通りを奥に行って2番目の建物です」 「今日は家に帰るんですか!」 「ええ。とりあえず、研究はひと段落つきそうなので」 「じゃあ、今日の夜、私がご飯作り行くのでちゃんと帰ってきてください!」 「え、あ、はい。ありがとうございます」 「じゃあ、そう言うことで、コーヒー飲んだら、さっさと研究終わらせてきてください」 「……はい。よろしくお願いします」  先生は、そう言って笑いました。 「そうしてください」  楓さんもそう言って笑いました。 そっぽを向いていましたが。 まったく素直じゃありませんね。
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