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「――んっ…」
薄く目を開け、数回瞬きして周りを見渡す。
そこは皆が良く使う、保健室のベッドの上だった。
薬品や医療品が棚にずらりと列んでいた。
翡翠は再度周りを見渡そうと思い、体を起こす。
「…痛ッ!?」
体を起こした瞬間、頭に痛みが走る。頭に触れてみると綺麗に包帯が、巻かれていた。良く見ると左腕にも巻かれていた。
「あら、目ぇ覚めたの?」
一番奥の部屋から女性が現れた。
白衣を身に纏っているから保健医だとわかる。
「怪我は大したことないわよ。腕は打撲で、頭はあまり被害はなかったわ。でも、少しでも痛みを感じたら病院いきなさい。」
「…そうですか。」
「それにしても、あなたも大変ね。」
「は?」
『大変』という言葉に疑問を持つ翡翠。
「ここに来た時は、そりゃあもう大変だったんだから!西原君はパニクって治療の邪魔して来るし、北條君は大泣きして琴月君から離れないし、林君と間宮君は3人の男子引き摺って来て悪魔みたいに笑いながら尋問し出すし…」
先生は盛大にため息をつく。
「…うわぁ」
全力で引く翡翠。
ふと外の景色を見る。空は爽やかな澄んだ青空だった。
「今、何時限目か分かりますか?」
「今は4時限目が終わって、昼休みになる前よ。」
ふわりと優しい笑顔で丁寧に教える保健医。
「じゃあ、俺戻ります。」
ベッドから降りる翡翠に心配の眼差しを向ける保健医。
「だ、大丈夫なの??」
「はい」
そばにあった自分の制服に手を掛ける。
翡翠が着替えるのを察知して、慌てカーテンを閉める保健医。
数分後、着ていた体操服を小脇に抱え翡翠が出てきた。
「お世話になりました。」
ぺこりと、頭を下げて礼を言う翡翠。
扉に手を掛けようとした時、保健医に呼び止められ、振り向く。
「制服持って来てくれたの間宮君よ。お礼言っときなさいね」と言い、笑顔で見送る保健医。
翡翠も笑顔で保健室を出た。
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