agitator

10/41
前へ
/49ページ
次へ
「よし、これでお前も晴れて傭兵だ。 立派に励めよ」 偽りの世界から腐った現実の世界に戻った私に、その言葉がかけられた。 チューブがいくつも繋がった重たいヘルメットを取り外し、簡易イスに背筋を伸ばして行儀よく座った先輩を見る。 「今までありがとうございました、橘教官!」 「ふん、貴様は結局、最後まで私を瑞希教官とは言わなかったな。 戦場で戦うことになったら覚悟しておけ」 なぜか不機嫌そうに言って部屋を出て行った。 気恥ずかしくでもなったのだろうか。 それにしても、と思う。 ここまで来るのに長かった。 戦争で親を亡くしてこのS.T.S(Soilder.Train.School)に 入ってから、十年弱になる。 厳しい戦闘訓練に何回も胃液を飲み、そして吐いた。 ユニットの操縦に何回も橘さんから怒られたこともあった。  
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加