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「よし、これでお前も晴れて傭兵だ。
立派に励めよ」
偽りの世界から腐った現実の世界に戻った私に、その言葉がかけられた。
チューブがいくつも繋がった重たいヘルメットを取り外し、簡易イスに背筋を伸ばして行儀よく座った先輩を見る。
「今までありがとうございました、橘教官!」
「ふん、貴様は結局、最後まで私を瑞希教官とは言わなかったな。
戦場で戦うことになったら覚悟しておけ」
なぜか不機嫌そうに言って部屋を出て行った。
気恥ずかしくでもなったのだろうか。
それにしても、と思う。
ここまで来るのに長かった。
戦争で親を亡くしてこのS.T.S(Soilder.Train.School)に 入ってから、十年弱になる。
厳しい戦闘訓練に何回も胃液を飲み、そして吐いた。
ユニットの操縦に何回も橘さんから怒られたこともあった。
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