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この腐りきった世界で、私は戦い続けた。
時には自分をごまかし、時には他人を欺いて。
「よくやった、ご苦労だったな」
通信機から声が聞こえる。
いつも私を支えてくれていた声。
私はミラー越しから変わってしまった世界を、もう一度見てみた。
黒い煙が辺りに立ち込め、建物の骸(むくろ)が戦況の甚大さを物語っている。
旧ケニアの地から見た空は黒かった。
まるで今からこの世界が黒に飲み込まれるかのように。
太陽の輝きなどとうになく、青かった空はもう地上から見ることは出来ない。
「一度しか言わない、聞いておけ」
通信機から聞こえる声の主はそんなことを言う。
私は操縦席に座りながら、言葉を待った。
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