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「おら、うっせーぞ」
そう穏やかな声で
宥めながら誰かが入って来た
「静かにしろー」
入って来たのは男で
男は手をパンパン鳴らしながら
教卓の前に立った
それでも
辺りは静かになるどころか
余計にうるさくなるばかり
「静かにしろって言ってんのが聞こえねーのか!」
男は教卓を叩いて
ポッケから銃を取り出し
天井に向けて1、2発打った
「お前…っ」
康隆が男を指差した
すると
一斉に教卓に顔を向けた
義子も智も
顔を歪めた
「忘れるワケ、無いよなぁ?」
そう言って
男は黒板に名前を書いた
「鶴田吾栗。前担任だ」
藤林先生は
初めて見た
この人が
A組の担任だった人か
鶴田吾栗
つるたあぐり
聞いた瞬間
ちょっと吹き出しそうになった
「先生はな、みんなと再会出来てすごく嬉しいぞ」
しみじみと言いながら
鶴田先生は泣きまねをした
「おい、ここはどこだよ」
本郷由宇
ほんごうゆう
が、静かにだが
声は怒りに満ちていた
すると鶴田先生は
眉を少し上げて
「君たちはニュースを見たのか?」
と、小馬鹿にした
「ここは十年前、地図から消えて人類の記憶からも消えた、麻裏市と言う無人の街です」
藤林先生は
ほんのちょっとだが
その街の名前を知っていた
確か
その町で大虐殺が起こって
住人全員が死んだとか
そうでないとか
そんな街で
一体、何をするというのだろう
藤林先生は
見当もつかなかった
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