嵐の前の静けさ

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  1年A組を乗せた貸切バス 2泊の宿泊研修を終えた40名だが みんな元気で賑やかだ 「あぁあ…終わっちゃったなぁ…」 と、盛大な溜め息を吐いているのは この話の主人公 藤林和也 ふじばやしかずなり である ネガティブな 新任教師である 生徒は宿泊研修が終わったというのに まだテンションが上がりっぱなしで 誰一人として寝ている者は居なかった 変わったクラスだなぁ と、心の中で貶していると 隣りから声が聞こえてきた 「藤林先生、ずいぶんと疲れてますね?」 冴島智 さえじまさとる 藤林先生が唯一 心を開いている(?)生徒 智は藤林先生の顔を見るなり 困ったような笑みを浮かべた 「こういうイベントはね、寝不足がつき物なんだよ」 隈のついた目で 智を軽く睨む藤林先生 「でも今、終わっちゃったなぁって…言ってましたよね?」 「そ、それは…」 まさか 学校に戻って普通の授業をやりたくない だなんて言えない まるで 生徒みたいではないか 「学校戻るの嫌だなぁとか思ってたんでしょ!?」 やはり智は 藤林先生の考えを見透かしていたようだ だが こんな性格の藤林先生と一緒に過ごしていると 嫌でも解ってくる 「お前は中学生か」 と、智の隣りに座っている 岡田義子 おかだよしこ が、つっこんだ どういうワケか 藤林先生と義子は 複雑な家族関係で 義子は藤林先生の 腹違いの妹に当たる そして極度の藤林嫌い 「俺、理科の先生だよ」 「理科が死ぬほど嫌いなのに?」 妹の義子にそう言われてしまっては 藤林先生に立つ瀬は無い 返す言葉を無くした藤林先生は 黙り込んだ  
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