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藤林先生は
バスの最前列に座っているため
無闇に後ろに向き直って生徒と
話が出来るワケではない
今近くにいるのは
冴島智と、岡田義子だけ
まるで
バスのこの盛り上がり様は
修学旅行である
藤林先生は
なんとなく出席簿を開いていた
欠席している者は
誰も居ない
中途半端な時期に
いきなり予告も無しに
この1年A組の担任になった藤林先生だが
研修の2日間くらいで
だいぶ、生徒と馴染めた気がした
そこは
いくらネガティブな藤林先生でも
そう思い込ませている
それにしても
藤林先生には解らないことがあった
どうして自分が
こんなに中途半端な時期に
青海高校に赴任して来たのか
たった3日前は
違う学校にいたのに
いつの間にか
誰かが藤林先生を
ここに導いた
理由も解らずに
前の先生に何があったんだ
事情も聞かされていない藤林先生は
少し怪しい感じがしたが
クビにならずに済んだだけマシである
今思い返せば
青海高校に飛ばされた理由も
少しは解るような気がした
藤林先生は
前の学校でちょっとした事件を起こした
それが何なのかは
後々解ることとして
これ以上
このことを深く考えてもどうにもならない
そう悟った藤林先生は
自分で無理やり納得させた
自分が事件を起こしたから
この学校に来た
1年A組の前の担任は
ただ長い休みをもらっていて
その代わりだ
それ以外
理由なんてある?
「ないよ…多分」
心の中で藤林先生は呟いた
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