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勢い余って、部室から出て行った美るて。
「……………誰も、来ないし……。」
思いっきり、みー君のほっぺたぶっ叩いちゃった。…苦笑い。
「美桜君、……ばーか…………。」
美桜が放った、心無い蓮美への一言。
「分かってない…分かってないよ、みー君は……。」
女子の気持ち、全然分かっていない。
女子って言うのは、…言ってくれなきゃ分からない生き物なんだよ。
「言ってもらわなきゃ、分からないんだよ…私も……。」
その時。急に突風が吹き、木々がザワザワっと鳴いた。
美るてが思わず身をかがめて、長い髪をかきあげてふと前をみると、
濃紺の学ランをキッチリ着込んだ、真夏日には決してそぐわない格好をした青年がたっていた。
異様な雰囲気をもった青年は、
怪訝な顔を浮かべた美るてに、笑顔で手を差し伸べる。
「君で、良いや……。」
青年の笑顔は美るてに近づくにつれて、冷たい表情へと変貌する。
青年の手が美るての頬に触れた。その手は、あまりにも、冷たい。血の気が無い。
「この人っ…………‼」
美るては察した。
「この人、人間じゃない…‼」
「いやっ……‼」
咄嗟に青年の手を振り払った美るて。しかし、
「……蓮美…直ぐ、もう直ぐだよ………。」
そうつぶやいて青年は美るての手首を掴む。
その力は尋常じゃない。
……手首…折れそう…………。
必死で抵抗するが、無駄だった。
容赦なく美るてを掴んだまま、風と言う風が青年と美るてを包み込んだ。
「みー君ーーーーー‼八尋ぉーーーー‼海里ぃーーー‼光明くっ……‼」
青年は美るてを連れて立ち去った。美るての悲鳴が虚しくこだまする。
「―――‼美るてっ⁉」
放送室の美桜が弾かれたように窓に目をやる。
八尋と、海里も。
嫌な、予感がする。
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