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ガコン……。
体育館前の自販機で五人分のジュースを、溜め息混じり買っている美桜。
「美桜君……あっ。有難う。」
話しかけようとした美るてに水が手渡される。
「お前は、水でええやろ?」
美るては、アナウンス担当。喉に人一倍気を使っているため、部活動中にジュース類は絶対に飲まない。
そして、炭酸ジュースはもってのほか。
一度昼休みの生放送中に水分補給のために水を飲もうとして、手違えて八尋の炭酸ジュースを飲んでしまい、途端に咳き込んだうえ嗚咽を起こし持ち直せなくなり、生放送中に大惨事を起こしてしまったトラウマがあるのだ。
「…あっ…えと…美桜君、今日終わったら、一緒にかえ…」 「じいちゃんとこ行くから無理。」
………。
「そ……か。」
………。
多分、今何話しかけても、「………。」のループ何だろうなぁ。と、空気を読んでみる美るて。でも、堪えきれずに
「あっ……じゃ、途中までいっしょに……」「いい…いらん。」「………。」「………。」美るてと美桜。彼氏と彼女でいる時間より、幼なじみ、友達としての時間の方が限りなく多い。
美るてから言わせれば、片思いしていた時間も含める。だからなのか、それともお互いの気質のせいなのか、少しマセているのに気分屋の美桜に、少し子供っぽいのに気ぃ使いの美るてがいつもあしらわれたり、美桜の気分に振り回されたりしている。
「好き」だなんて言葉、もう、どれだけ聞いてないだろう………。
それも美桜の気分次第。仮に、自分から言ったって、軽くあしらわれるか無視されるし。
「コレ、上まで持って行っといて。俺、もう行くから✋」
「美桜君っ⁉鞄は…」
「今日財布しか持ってない。…じゃー✋」
そっけない。本当、そっけない。
自分たち、本当に付き合ってるのかわかんない。
私に何言ったって、無駄だとでも思ってるのかな?
話くらい、いくらでも聞いてあげられるのに…。
ひょっとして、付き合ってくれるって返事してくれたのって、美桜君のいつもの気まぐれかなんかじゃないのか………。
いけないとは分かっていても。
考えても悪い考えしか浮かばないって分かっていても。
手渡されたお茶やジュースや水の入った四本のペットボトルを抱えながら、
美るては色々と考えられずにはいられなかった。
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