ドラゴンが現れましたとさ

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「………………………」 「………………………」 二人の男が無言でガギン山へ続く草原を進んでいた。その空気は端から見ても重い。 一人の男は灰色の髪と鋭い目が特徴的な男だった。その禍々しい独特な威圧感は盗賊でさえも震え上がらせる事が出来るような強烈なもので、実際この男は盗賊を一方的に殴り倒した事がある。 そんなこの男は魔王軍の侵攻部隊を一瞬で倒し、勇者と呼ばれていたりする。が、しかしその容姿に似合った冷酷非情な振る舞いから、陰では勇者(仮)なんて呼様されていたりする。本名は不明だ。 そんな勇者(仮)はその長身痩躯の身体に装飾煌びやかな服を纏っており、腰にはやや古めかしい愛用の剣を差している。 その隣を歩くのは、かなり膨らんだ巨大なリュックを平然と背負う若い男だった。 彼は“元”ブサ国国王護衛兵士隊戦闘兵、その名をミカルと言う。 整った優しそうな顔付きをしており、やや癖がついた薄青色の髪と相俟って彼を幸薄そうな印象に捉える。事実、彼は不幸と言えば非常に不幸だった。 ミカルは、兵士として鍛え上げられた体躯を白鎧で包み、腰には鞘に入った剣を差している。そんな兵士らしい格好は背中のリュックとかなり不釣り合いであった。 彼はかなり複雑な経由で、非常に簡素な理由で勇者(仮)と、魔王討伐の旅を続けている。彼のあらゆる不幸の原因は勇者(仮)にあるであろう。いや、不幸だからこそ勇者(仮)が来たのかもしれない。
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