スカウト

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中は赤い絨毯をひいたような一面真っ赤だった。 前方にはソファーが向かい合うように二つあり、そのソファーとソファーの間には長方形の机があった。 そして奥には社長室などによく置いてある大きな机に、それに見合った黒い椅子。 一番目を引くのは真っ正面の壁だけが一面窓で、とても眺めが良さそうだ。 いつの間に上の階まで来たんだろう?エレベーターなんて乗ったっけ? 少し考えているが悩んだところで答えは見つからなかった。 「やぁ君が最後の一人かい?」 椅子に座っていた四十代くらいの女性がおそらく僕にそう言ってきた。 僕が返答に困っていると、隣の女性が答えてくれた。 「はい、先程街でウロウロしているのを発見し、事情を説明すると、芸能界にはとても興味があると言っていました」 代わりに返答してくれているが、僕は断じて芸能界にはとても興味があるとは言っていない。 その言葉に椅子に座っている女性はウンウンと頷いている。 「わかった、じゃあまずメイクしてきてくれる?綾香、連れてってあげなさい」 ……綾香?綾香って誰? あとメイクって何?バイトの内容は教えてくれないの?
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