スカウト

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「う~ん、いい声だね」 突然この人はこんなことを言い出したのでびっくりした。 何この人? 変質者かな。変質者ならば関わると変なことに巻き込まれると思う。 しかしすぐに逃げ出したいが、変質者に背を向けると何されるかわからない。 じゃあなるべくさりげなく、ここから立ち去るべきだ。 まぁあくまで変質者ならばの話だが。 逃げ出したい気持ちを必死に押さえているのを気付かれないように必死だ。 「……はい、ありがとうございます」 少し苦笑いしながら一応お礼を言う。 すると、女性は僕の体をなめ回すように下から上まで見る。 「うん……完璧だ」 最後に目が合い、ニヤつきながらそう言い出した。 この人、絶対に変質者だ。 今までのことを思い返してみた。 通りすがりの初対面の人に声かけられて、返事をすると、いい声だねと言われ、その後体をなめ回すように見られて、ニヤッと笑う。 すごく怖い。 僕は怖くなったけど、相手は変質者だ。急に逃げ出すと追われてしまうかもしれない。 だから、一礼して後ろを向き早歩きで去ろうとする。 ガシッ しかし、健闘むなしくいきなり肩を掴まれた。 僕は怖いと思いながらも首を時計が時を刻むようにカチッカチッと後ろに向けた。 「なんで逃げるんですか?人が話しているのに」 ちょっと怒りながら僕に言ってきている。 変質者に捕まった。変質者を怒らせてしまった。 何されるんだろうとすごく不安になる。 「ひっ……」 怖さから、ついそう声が出てしまった。 「なんでそんな声を出すんですか?」 僕の言葉を聞いた女性は勘に触ったのか、本気で怒ってそう言ってきた。
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