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「ごめんなさいごめんなさい」
僕は涙目になりながら必死に謝る。
「わかればいいんですよ。では慌てずに聞いてくださいね」
また怒られたくはないので、まだ怖さからか心臓がドキドキしているが、それを隠すように真顔になろうとする。
「……はい……」
しかしそれは無理だったみたいで、顔がまだ引き攣っているようだ。
それを見た女性は一瞬苦笑いするがすぐに真顔になる。
「あなた芸能界に興味ない?」
……ん?
どういうこと?
「…………はい?まぁないって言ったら嘘になりますけど……」
質問の意味がわからず、率直な思いを告げる。
当然まだ変質者という疑いが晴れていないため、警戒は強めている。
「じゃああるってことね。じゃあ着いてきて」
いきなり僕の手首を掴み、引っ張りながら先を歩きだした。
身の危険を感じ、急いでその手を振り払う。
そして身構える。
僕は喧嘩はしたことがない。しかし相手は女性だ。おそらく力では僕が勝るはずだ。
「僕をどこに連れて行くんですか?
僕をどうする気ですか?」
僕の言葉に女性はキョトンとした様子で、普通に答えてきた。
「ん?着いてきたらわかるよ」
答えになってないよ。女性の言葉に唖然としてしまうが、すぐさま警戒を強める。
「そんなに警戒しなくていいよ」
そう言うと僕の手に握られているバイトの紙を見つめる。
目を軽く細めているから、おそらく書いてある内容を見ようとしてるのだろう。
しかし僕は手に持てるように小さい紙をチョイスし、小さい紙には店の名前がぎっしりと書いてある。
だから内容はわからないはずだ。
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