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「う~ん、ちょっと見えないな。
でも内容はバイトかな?」
えっ?なんでわかるの?
「その顔、当たったみたいだね。あてずっぽなのに当たっちゃったよ」
女性は当たったことが嬉しいのか、軽く喜んでいる。
なんか身構えてる僕が馬鹿みたいじゃん。
「ってそこじゃなくて、あなたにいいバイトがあるんだけど」
その言葉に僕は反応する。
さっきからバイトはハズレばかりだ。今日はバイトを見つけるまで帰らないつもりだ。
だから今は喉から手が出る程欲しい。
「給料もいいよ」
その言葉にも反応してしまう。
僕が反応する度に女性はどんどん笑顔になっていく。
なんか相手の思う壷のような気がするが、仕方ない。
「じゃあ着いてきてね」
そう言って、女性は再び僕の手首を引っ張って歩いていく。
女性は行き交う人々を器用に避けながら歩いている。僕はされるがまま。
その状態が続いた後、周りの建物より一際大きなビルの前に着いた。
そこは、大分前まで有名だった企業だ。しかし最近はこの企業の名前はあまり聞かない。
僕の手首を引っ張る女性はビルの前にいる警備員みたいな男性にIDカードを見せて、僕を指差しながらなんか話している。
僕は警備員をじっと見ながら思った。
あれって人形じゃなかったのかと。全く動かなかったから人形だと思ったのだ。
内心驚いていると事情説明が終わったらしく、中に入れさせてもらった。
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