スカウト

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中に入ってからまず、気付いたのが、誰一人歩いていないということだ。 周りは綺麗に片付いており、ゴミ一つ落ちていない。 そして僕はどんどん奥に連れていかれている。だんだん不安になってきた。 初めて入った見知らぬ場所に僕がキョロキョロしながら歩いていると、 ドンッ 僕の手首を引っ張る女性はある部屋の扉の前で止まったらしいが気付かず歩いていた僕は女性にぶつかってしまったらしい。 「いったーーい」 なんとまぁかわいらしい声を出すんだろう。 これがさっきあんな怖い顔で怒っていた人と同一人物なのだろうかと疑問に持ったのは秘密。 「すみません。ちょっと考え事しちゃって」 そう言いながら倒れた女性に手を差し延べる。 女性は一瞬なんの意味の手かわからず、えっという表情をするが理解したらしい。 「わかればいいのよ」 そう言って、うすく頬を赤く染めながら僕の手をとって立ち上がった。 「いい?今から社長の部屋に入るけど、礼儀正しくするのよ」 まだ少し赤い頬を両手で隠すように包みながら言う。 僕が返事をする前に扉を開けてしまった。 (まだ心の準備が……) そう思っているのを他所に扉が全て開け放たれてしまった。
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