初めて見る顔と現実

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  一日の授業が終わり、部活の時間がやってきた。 文化部だからとくに着替えるわけでもなく、ただ活動場所に移動する。 移動して荷物を置いたら、美奈は教室に忘れ物をしたらしく、取りに行った。 待っている間、暇だから音楽でも聴こうと、しゃがんでミュージックプレイヤーをカバンから出した。イヤホンを付けて、曲を選んで、再生ボタンを押したとき、背後に人の気配を感じた。 まさか、と思ってしゃがんだまま後ろを向いた。 まだ足元しか見えないけど、確実にスーツだし‥。やばっ‥。 私の学校は校内でミュージックプレイヤーを使うことが禁止されている。 どうしよう、と固まっていると、声をかけられてしまった。 「‥山崎さんだよね。何をしているんですか?」 音楽が流れていて、声はよく聞こえなかったけど、何を言っているのかは分かった。 よりによって、私のこと知ってる先生だし‥。あーもー!! 「‥あー、友達待ってます。」 先生の位置からも確実にミュージックプレイヤーは見えていると分かっていながら、いかにも私は悪いことはしてません。みたいな感じで言った。 先生が引き下がるわけないのに‥ 「じゃなくて、手に持ってるの」 あーあ もう、ごまかせないね。 そう諦めて振り返りながら立ち上がった。 分かりましたよー!そう嫌味ったらしく言う予定だった。  
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