初めて見る顔と現実

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  「あー、俺もド素人だけど」 「そ‥うなんですか‥‥」 「初めて曲弾けたときってさ、すっげー嬉しくなかった?」 「嬉しかったです!ギターが一気に好きになりますよね!」 「そうそう!楽しいよなー」 こんなに楽しそうに話す先生を見るのは、初めてだった。 いつもぶっきらぼうにしてるから‥。 もしかしたら知ってるの私だけかもしれない。 そう考えると嬉しくなった。 「最初は、ジャーンって鳴らすだけで、テンション上がりました!ピック集めるのも楽しいですし!」 「俺もピック集めたな~。まだ残ってるかな。」 「思い出ですからね~。残ってるといいですね。」 「もし残ってたら、いらないやつ、やるわ」 ‥へ? いきなりのことで頭がまわらない。 ちょっと待って。 え、ピックくれるってことだよね。 「‥いいんですか?思い出の品を。」 本当は欲しくてたまらないけど、ここで大喜びなんてしたら、バレバレだもんね。 「いいよ、別に。俺もうほとんど弾かないし。すっごい気に入ってるのは、あげないけど。」 ‥やばい。 今日幸せすぎる~!! いつもの自分を忘れるくらい、心の中ではしゃいだ。 「って言っても、いつ持ってくるか、分かんないけどね。」 「えー‥。でも絶対だよ!?」 我を忘れてタメ口になっていた。  
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