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「ていうか、中村さん。荷物置いてこなくていいの?」
さっきとは違い、いつもの声で言った。
「あ‥。由梨、ちょっと置いて来るね‥。」
「‥うん!いってらっしゃい!」
私がそう言うと、美奈は忘れ物を置きに行った。
さっきまで嬉しかった先生との空間が、今は痛い。
ただただ沈黙が続く。
私は、泣きたくてしかたがない衝動にかられた。
ここで泣いたら、先生が困るじゃん。気付かれるじゃん。
だから、泣くな。泣いちゃ駄目だ。絶対駄目だ。
何回も込み上げてくる涙を押し戻した。
「‥あ。さっきのピックの話だけど、いつになるか、本当に分かんないから。でもいつか持って来るな。」
‥なんで?
なんで期待させるの?
どうせ叶わないなら、期待させるようなこと言わないでよ。
そう言いたくなる気持ちを抑えた。
「‥持ってこなかったら、何か奢って下さいね!」
精一杯の笑顔で応えた。
いつもの私に戻らなきゃ。
「え~、分かった。」
「絶対ですよ?」
「はいはい。」
最後流されたことが気になったけど、私は何も言わなかった。
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