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「‥先生、まだ見つからないんですか?」
ドアからヒョコッと顔を覗かせた美奈が言った。
美奈の表情が暗くなっていることが、すぐに分かった。
「まだ見つからないわ。」
「じゃあ、今日の部活なしですか?」
「資料がないんじゃ、しょーがないな。」
先生がそう答えると、すぐに大声が資料室に響き渡った。
「やったー!!じゃあ帰ろ!!!」
そう言ったのは、私だった。
「え、あぁ、うん!」
美奈がそう応えた瞬間、私はダッシュで荷物を取りに行き、はい!!と美奈の荷物を渡して、先生には何も言わずに帰った。
「由梨?‥ごめんね。私、余計なことしちゃった‥。」
美奈が申し訳なさそうに話し掛けてきた。
「ううん!!先生の言ってることは正しいよ!先生に恋した私が悪いんだよ!」
無理矢理笑った。
じゃないと、今にも涙が溢れそうだったから。
それを分かってくれたのか、美奈はもう一度、ごめんね、と言って俯いてしまった。
美奈は私のために、してくれたんだから、美奈が落ち込むことないのに‥
「美奈!この前美奈が言ってた映画、見たよー!」
話題を変えた。
このままの空気じゃ、何か美奈に悪いよ‥。
それからはその映画で持ち切りだった。
少し歩いてから、美奈と別れ自転車にまたがり、ゆっくり家に帰った。
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