初めて見る顔と現実

10/13
前へ
/123ページ
次へ
  「‥先生、まだ見つからないんですか?」 ドアからヒョコッと顔を覗かせた美奈が言った。 美奈の表情が暗くなっていることが、すぐに分かった。 「まだ見つからないわ。」 「じゃあ、今日の部活なしですか?」 「資料がないんじゃ、しょーがないな。」 先生がそう答えると、すぐに大声が資料室に響き渡った。 「やったー!!じゃあ帰ろ!!!」 そう言ったのは、私だった。 「え、あぁ、うん!」 美奈がそう応えた瞬間、私はダッシュで荷物を取りに行き、はい!!と美奈の荷物を渡して、先生には何も言わずに帰った。 「由梨?‥ごめんね。私、余計なことしちゃった‥。」 美奈が申し訳なさそうに話し掛けてきた。 「ううん!!先生の言ってることは正しいよ!先生に恋した私が悪いんだよ!」 無理矢理笑った。 じゃないと、今にも涙が溢れそうだったから。 それを分かってくれたのか、美奈はもう一度、ごめんね、と言って俯いてしまった。 美奈は私のために、してくれたんだから、美奈が落ち込むことないのに‥ 「美奈!この前美奈が言ってた映画、見たよー!」 話題を変えた。 このままの空気じゃ、何か美奈に悪いよ‥。 それからはその映画で持ち切りだった。 少し歩いてから、美奈と別れ自転車にまたがり、ゆっくり家に帰った。  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加