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「木之下さん、前向け」
先生の声が教室に響く。
一応『さん』を付けているのに、見下してるような、よく分からない注意のしかた。
「木之下さん」とは、朝一緒に教室に入った千夏ちゃんのことだ。
「はいはいはいはい」
そう言って嫌々前を向く千夏ちゃんを見て、先生はため息をつきながらも授業を進めた。
基本的に先生の授業では、発言をしたりしない。だから、私は先生と一対一で、ちゃんとした会話をしたことがない。
いや。
授業中の発言が会話になるのか、という問題なのだが‥
とにかく面と向かって、話をしことがない。
先生と生徒数人という輪には、いたことがあるけど‥
キーンコーン
今日も1番長い授業が終わった。国語は一週間に4日もあるから、ほぼ毎日先生の授業を受ける。
まぁ、副担だから毎日顔合わせるけどね。
「じゃあ、漢字の直しやって今週中に提出」
それだけ言って先生は教室から出ていった。
先生、切ないよ。
先生が授業したり、注意したりしてるところを見るたびに、嫌なくらい現実が突き付ける。
あなたは先生。
私は生徒。
それは変えられないんだって。
分かってても、やっぱり辛い。
気付いてほしいけど、気付かないで。
気付かないで‥‥
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