第二章

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全く、とウィンバードは溜め息を吐いた。 「連れてきた俺も俺だが…、アンタ危機感って言葉知ってるか?」 結局行き場所がないと言う女を、ウィンバードは家に連れ帰ったのである。 助け出したのが自制心の利くウィンバードだったから良かったものの、並みの男ならば今頃女は美味しく頂かれてしまっているだろう。 「危機感…でございますか?」 「あぁ。………いや、もう何かいいや」 ほわんと効果音が付きそうなほど無垢な瞳で首を傾げる女にウィンバードは投げやりに言って、女を見つめた。 なる程、とても可愛らしい。 年は自分より少し高いくらいだろうとアタリをつける。 「ところで、アンタ名前は?」 「紗菜です」 「……名字は?」 普通名前を聞かれたらフルネームで答えるだろ、と言うツッコミは飲み込む。 紗菜と名乗ったこの女、かなり天然らしい。 「あら、そうですわね。名字名乗ってませんでしたわ。私、夜川紗菜と申しますの」 口調からすると、お嬢様なのだろう。 紗菜はにっこり笑って、ウィンバードの次の言葉を待っている。 その瞳はまるで、名前で呼んで下さいませ、と言っているようで。 「……紗菜、ね。俺はマイケル・ウィンバード。好きに呼べ」 「ウィン様で」 「……却下」 好きに呼べとは言ったが、ウィン様、なんて恥ずかしすぎる。 「ウィンバード様で」 「あぁ」 ウィンバードは感じていた。 紗菜が自分の氷を溶かしてくれる存在だと…。 それが真実かどうかはまたいずれ………。
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