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カランッ。
ドアのベルが鳴った。
ソファで惰眠を貪っていた男ーマイケル・ウィンバードはその音で目を覚ました。
昼寝の邪魔をされて、不機嫌な顔を隠しもせずにウィンバードは玄関に向かった。
「誰デスカ?」
顔に相当する位不機嫌な声で聞けば、馴染みある声が、ウィン…と言った。
「……アーリーか?」
「ああ」
玄関を開ければ、瞳を真っ赤に腫らした昔からの友人であるアーリー・フェルナンツェが抱き付いてきた。
「どうした、アーリー?」
常にポーカフェイスのウィンバードだが、今回ばかりはかなり驚いた。
「ウィン……肉親を失うのはこんなに悲しいんだな」
その一言で、アーリーに何が起こったのか悟った。
アーリーの家族は殺された………。
自分と同じように。
「ウィン…。警官の俺がお前に頼んでいいか分からないが…頼む!」
「…………殺るよ。お前の家族を殺した奴も、俺の家族を殺した奴も」
2年前、ウィンバードは家族を失った。
ウィンバードはその際誓ったのだ。
復讐してやる、と。
そして、彼は喧嘩屋になった。
喧嘩屋とは、殺し屋と似通っていて裏社会の仕事であるが、ターゲットを殺すまではいかない。
例えば、とある社長を狙う不届き者に制裁を加える時にウィンバードの出番となる。
また、家族を殺した犯人を探すのにも喧嘩屋は便利であった。
と、いうのも裏社会に身を置くことにより多量の情報が集まるからだ。
その中から、必要な情報を記憶する。
僅かな情報でも、ウィンバードに取ってはありがたいものであった。
そんなウィンバードの仕事を、本来敵対関係で有るはずの警官をしているアーリーは黙認していた。
2人が幼少の頃からの大親友であったのも一つの原因ではあろう。
だからこそ、ウィンバードはアーリーの頼み事に乗った。
今までのお礼に。
また、親友のために。
「ありがとう、ウィン」
「お互いさまだ」
アーリーはウィンバードに抱き付いたまま、涙を流した。
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